脳脊髄液と脳のリンパデトックス
脳を意図的にデトックスできるかもしれません
米国のボストン大学で行われた研究によって、一定の視覚刺激から、脳が解放されたとき「脳脊髄液」の量が増加して、脳の老廃物を押し流してくれる可能性が示されました。
脳脊髄液による「脳のお掃除」効果は、主に睡眠中に起こると考えられていましたが、今回の発見により、脳の掃除を目覚めている状態でも、意図的に起こせる可能性が出てきました。
研究者たちは、脳の老廃物を意図的に洗い流す方法が確立されれば、老化やアルツハイマー病など、老廃物の蓄積に起因する脳機能の低下を、防げるようになると述べています。
しかし、視覚を刺激するだけで、なぜ脳のお掃除機能がオンになるのでしょうか?
研究内容の詳細は、2023年3月30日に『PLOSBiology』にて公開されました。
筋肉を酷使すると、乳酸などの老廃物が筋肉に蓄積し、筋肉痛を起こすことがあります。
脳も同様であり、激しい脳活動によって、脳内に大量の老廃物が溜まってしまいます。
古い脳科学の本や怪しい自己啓発本にはよく「脳は、唯一の疲れ知らずの臓器」と書かれていたりしますが、実際には使った分だけ脳も疲労し、放っておくと老廃物まみれになってしまいます。
しかし近年になるまで、脳がどのようにして老廃物を除去しているのか、その詳しい仕組みは謎に包まれていました。
というのも、脳に溜まった老廃物は、血液に乗って脳から排出されると考えていましたが、脳から出ていく血液を調べると、予想よりはるかに少ない老廃物しか含まれていませんでした。
そうなると、脳内の老廃物は溜まる一方になりそうですが、実際調査を行うと睡眠を取った際に大幅に低下していることが判明します。
つまり、脳は老廃物を血液に載せる以外の手段で、睡眠時に脳の外に排出していると考えられているのです。
そうなると、脳内の老廃物は溜まる一方になりそうですが、実際調査を行うと睡眠を取った際に大幅に低下していることが判明します。
つまり、脳は老廃物を血液に乗せる以外の手段で、睡眠時に脳の外に排出していると考えられているのです。
そのもう一つの手段が脳脊髄液でした
脳脊髄とは、脳と脊髄を包むように存在する透明な液体であり、脳に浮力を与えて頭蓋骨内部で浮かせて保護する役割をしていると考えられています。
そして2019年に行われた研究によって、私たちが眠っているときに、この脳脊髄液に強力な波が発生し、脳の老廃物を洗い流していることが示されました。
古くから睡眠には、脳の老廃物を洗い流す効果があると言われていましたが、脳脊髄液がその重要な役割の担い手だったのです。
また睡眠中に脳脊髄液に発生する波の正体を調べたところ、呼吸や鼓動のリズムだけではなく、深いノンレム睡眠時に現れる、神経活動に同期して発生していることが示されました。
(※他にも2012年に発見されたglymphaticシステムには、脳の「リンパ系」に相当する機能を持っており、脳の老廃物を除去する「下水」の役割を果たしていることが示されました。長らく中枢神経には、リンパ系は存在しないと考えられていたので、この発見は驚きでした)
脳内にもリンパは流れている
2015年、バージニア大学医学部で中枢型リンパ管という、全く新しい組織が、人間の体内に存在することが発見されました。
中枢型リンパ管は、脳から余分・不要なリンパ液を廃液する役割を担っており、神経疾患や免疫性をよりよく知る上で重要な組織です。
これまでリンパ系組織は、脳内には存在しないものとされてきていました。
中枢型リンパ管は、脳内部及び外部血管から血液を廃液する硬膜静脈洞内にあり、またその主要血管付近にあると言うことです。
中枢系リンパ管の存在の発見は、多発性硬化症や、アルツハイマー症、自閉症などといった難解な疾患を理解し学ぶ上で大きな役割を果たすのは確かだということです。
リンパ系は動脈から血液成分が血管外に流れ出て、その液体が酸素や二酸化炭素の受け渡しを行い、ブドウ糖などのエネルギー源の受け渡しを行います。
それから、液体がリンパ液となって排水されて静脈に戻ることで、生体内の細胞は生き続けることができます。
もしもリンパ系が詰まり、狭窄してうっ滞すれば、液体は停滞し、細胞は酸欠に陥り機能しなくなります。
これまで原因不明とされていた神経疾患が、リンパ系の炎症によるうっ滞が原因で神経細胞が壊死していく原理等が理解されていく可能性があるとされています。
下垂体周囲にも硬膜静脈洞は存在し、頭蓋骨の歪みも含め、歯科治療とは密接した関係にあると考えます。
噛み合わせの影響は頭蓋骨の歪みにとどまりません。
全身に及びますが、特に位置的にも近接し、直接的な変化、反応をもたらされる筋肉が多数存在することから頸部、頚椎への影響は大きいと考えられます。
市松模様による脳を活性化
一方、これまでの研究により、老化に伴う認知機能の低下やアルツハイマー病などでは、脳脊髄液の流れの現象が報告されており、脳脊髄液の状態の改善によって、認知機能を改善できる可能性が指摘されていました。
そこで今回ボストン大学の研究者たちは、外部からの刺激を行うことで、脳脊髄液の流れを発生させる方法を調べることにしました。
これまで、脳脊髄液による脳のお掃除効果は、主に睡眠中にしか起こらないと考えられていましたが、脳脊髄液の流れを起こすだけならば、目覚めている間にも可能なはずです。
といっても、人間をルーレット版に縛り付けて、無理やりに脳脊髄液を循環させるわけではありません。
理論的にはそれも可能かもしれませんが、今回の研究では明減する白黒のチェック柄(市松模様)を用いた視覚刺激が行われました。
これまでの研究により市松模様が、脳活動を活性化し、血流を促すことが知られていたからです。
視覚刺激による脳脊髄液の増加
もし活発な脳活動の後に多くの老廃物が残る場合、それを除去するために、一時的な脳脊髄液の流入増加が起こる可能性がありました。
実際の調査にあたっては、被験者たちにMRIに入ってもらいながら、1時間にわたり目の前のディスプレイで市松模様と何も写ってない状態が16秒ごとに繰り返される様子を眺めてもらいました。
結果、視覚刺激が行われると、まず脳内の血流量が増加し、画面が暗くなると、脳血流量の減少が見られ、代わりに脳脊髄液の流入が増加しました。
脳脊髄液の流入は、睡眠時に比べてわずかであったものの、意図的に起こせることがわかったのは、今回の研究が初めてとなります。
ただ今回の研究は、人間の被験者を対象にしたものであったために、脳を摘出して老廃物が本当に増えたり減ったりしているかどうかを確かめることができませんでした。
しかし、目覚めているときの視覚刺激が、脳脊髄液の流入増加につながったと言う結果は、今回の医療研究において、有望なものと言えるでしょう。
もしかしたら未来の世界では、認知症予防に置いて、VR体験の有効性が明らかになるかもしれません。
背骨(頚椎・胸椎・腰椎)から仙骨
は脊髄を有し、そこからは脊髄神経が伸びて、臓 器、脈管、筋肉、皮膚、多くの運動、感覚を司っています。
頸椎から脳にかけては、副交感神経支配領域にあたり、体表面の感覚は、指、手、腕から上位を支配しています。
頭蓋骨の歪みと同じく、筋肉の過緊張により頸椎の並びに歪み、傾き、ズレ、捻じれが引き起こされることにより、脊髄神経の神経根が圧迫され、神経系の働きに異常をきたすことが考えられます。
臨床的に言えば、手のしびれ、睡眠導入障害、臓器の不調、頭痛、めまい、難聴、それらの症状の変化、改善は治療を進める上でよく診られるものです。
ただし、全身を総合的に診た場合、噛み合わせが原発のものばかりではないので、外傷によるもの、疾病によるもの、先天的なもの、後天的変形、呼吸器やその他の臓器の問題によりもたらされるもの、生活習慣による影響。
それらに十分な考慮が必要なことは間違いありません。